2009年2月24日火曜日

日経ビジネス:「偽装農家」と、見て見ぬふりをする農業委員会と農水省が日本の農業をダメにしている(神門善久)

いつもながら限りなく憂鬱になる報告:
ずさんな農地行政が農業の自壊を招く:日経ビジネスオンライン: "耕作放棄や違法転用によって、消えていく農地。機を見て農地を売り抜こうとする「偽装農家」。それを見て見ぬふりをする農業委員会と農林水産省——。明治学院大学経済学部教授、農業経済学者の神門善久氏は、これらの問題を早くから指摘してきた。今回から2回にわたり、著者の吉田鈴香が神門善久教授に話を聞く。"
今回は第一回とのことだが、内容をご紹介。

抜粋:
  1. いいかげんな農政提言が出るたびに、農業は間違いなく悪くなっています。農政提言のワナは、大きく3つあります。第1は、「規制にしがみついているJA(全国農業協同組合)と農水省をやっつければ、農業は活性化する」というもの。2番目は「農業には秘められたビジネスチャンスや、世知辛い現代社会が忘れた価値があり、農業の新たな価値に目覚めた人が確実に増えている」というもの。そして3番目は「食糧危機が来るかもしれないから、皆で自給率を上げよう」というものです。この3つの提案は論理が単純明快で、読者にもウケる。ただ3つに共通している致命的な欠点は、事実と異なることなのです。
  2. それよりも重要なのは、今、大変な不正が起きているということです。農業の最大の問題は、農地と労働で違法・脱法行為が急拡大していることです。転用規制も税制も、法律の条文はどんどん無視されます。耕作放棄して雑種地になっていても、農地と称して相続税を逃れる。いかがわしいダミー農業生産法人が農地を買い漁っても歯止めがありません。農地法の規制が新規参入を阻害しているというのは、私には信じられない話です。
  3. 優良農地は違法転用などによって住宅地や商業施設にされ、地権者が「濡れ手で粟」の利益を得ています。農地扱いだから相続税の丸逃れをしてしまうのです。耕作放棄も蔓延している。稲作で農業の体裁を整えながら、機を見て農地を売り抜けようとしている「偽装農家」も多く、農業委員会も農水省もこれを看過しています。農地の“錬金術”に騙されてはいけません。そして、産廃業者の流入。これらには農政部や政府、農業委員会も絡んでいるでしょう。
  4. 農村には「都市部とは違って、昔ながらの集落機能や規範がある」と思うかもしれませんが、実際にはそうでもないのです。既に、農村にもミーイズムやモンスター化が来ている。平地農業地帯というのは本来、収益を生むはずの農業地帯です。そこで耕作放棄が発生しているのは、担い手不足のせいにはできません。「偽装農家」による非営農目的での農地所有や、農地の転用期待こそが、平地農業地帯の耕作放棄の主たる原因です。
  5. 中山間農業と平地農業は、別に議論すべきだと思います。高齢化した中山間農業の耕作放棄地の映像だけ見せておいて、「高齢化が耕作放棄の主要原因」というストーリーを作るのは、平場の優良農地で発生している農地の無秩序化から目をそらす方便です。土地転用だけでなく、減反論議もそうです。目下の減反論議は実態と乖離した抽象論になっています。その結果、産廃業者と偽装農家ばかりが“漁夫の利”を得かねない状況です。解決を求めるには、実態をきちんと見るところから始めなければいけません。
  6. まずは、どれぐらいいいかげんなことが行われているかを洗いざらい出すべきです。農地だと、農地基本台帳と実態が全然合っていない。農地パトロールがいいかげんである。「5年以内で耕作放棄地解消」と言っているけれど、これは違反転用の追認に使われる可能性が高いんです。農外転用も、耕作放棄地解消策の1つとして農水省が容認しているからです。

ニッポンの農業はどんどんダメになって行くが、当事者は一向に平気。そのツケはすべて消費者が払払う仕組みとなっているからだ。

7 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

「本当の農業はどうでもよくて、農業のことでイメージを膨らますことを楽しんでいる」ひとりとすれば、理想は国土全ての国有化。
売り逃げを図る不動産業者の無秩序な開発と劣悪住宅。スクラップ&ビルドを繰り返し、零細小売店の存在など眼中にない大型スーパーを主力とする企業集団。バブル期の都市及び近郊農家の大半の「天下を取った」有り様も、記事にある産廃業者の暗躍もそう。個人や民間に狭い国土を任せていては、何時までたっても良くならない。

Unknown さんのコメント...

ところが実際は逆の方向に進んでますね。現行の農地法には「耕すものに農地を所有させる」という農地解放の精神がまだ一応生きてますが(実際問題は別にして)、今度の改正案は「農地の私有に完全な財産権を与える」というものですから。

匿名 さんのコメント...

石破大臣の名言・「水田を守るのではなく、票田を守っているという批判をあびるようになってきた」
2月28日よみうりテレビの番組「ウエークアップ」で、株式会社の農業への新規参入に障壁があったことをあげての発言。

神門義久氏の 指摘は確かに確信をついたものではありますが、既に10年以上前から有識者などが繰り返している内容でもあります。普通なら「もうそろそろ議論は出尽くしているのだから、指針や方針をまとめ国の政策に反映しよう」という段階でありましょうが、族議員や省益を守ることを本分とする所轄大臣の抵抗力の方が強く、今まで議論さえ行われていないのが実態でしょう。
石破氏のような大臣が現れ、さあ、これから“議論”が始まりますのやらどうやら。
始まったとしても5年やそこらはあっという間、私は悲観しています。まして小沢政権になったとしても、彼は(票田を守るために)ミョウなことを言っているし。

匿名 さんのコメント...

訂正・神門義久氏の指摘、「確信」は「核心」の変換ミスでした。

Unknown さんのコメント...

10年以上前からじゃなくってもう30年以上前から指摘され続けてきたことですが、既得権抵抗勢力はきわめて強力で一向に改革がなされない。「おいらの生存権」という話になるのですが、街のタバコ屋さんも酒屋さんも同じことをいいながら政治圧力団体を持たなかったので合理化が出来ましたが、農村は一番強力な政治圧力団体なので簡単にはいきません。石破大臣はえらいけれど「大臣はすぐ辞めるけどおいらは世襲制だぞ、どっちの言うことを聞く?」と農水族議員先生は霞ヶ関に脅しをかけます。結局民主主義ですから、国民が被害者であるとはっきり認識することからすべてのことが始まります。

ろーりんぐそばっと さんのコメント...

しかし
そもそも30年たっても直らないのは
何が原因なんでしょうか。

Unknown さんのコメント...

そうですね〜。このやり方を維持することで得する人が政治力を持っているからだと思います。